数年前から発酵食品ブームが始まり、今は「腸活」が流行しているようです。
私の大学では栄養科では珍しく、卒業研究があり「腸の細胞と食品成分の影響」について研究していたので、「腸活」ブームで注目が集まるのをとても嬉しく思っています。
ところで…
「腸内環境ってなんでしょう?」
「どうやったら腸が健康になるのでしょう?」
今回は、腸の基本の知識と腸内環境改善についてまとめていきます。
〇食べ物の消化・吸収の約90%は「小腸」
小腸は、食べ物の消化・吸収をする場所です。胃酸で消化された食べ物を、さらに分解して、体のなかに吸収していきます。
【小腸のきほん知識】
・全長6~7mの長い管
・十二指腸、空腸、回腸にわかれている
・膵液や胆汁など、消化酵素をふくむ消化液を、蠕動運動によって混ぜ合わせて食べ物を分解する
・小腸を取り囲む「毛細血管」に栄養素を取り込んで、全身に送り届ける
・不要な食べ物を大腸に送って排泄する
私たちが運動に必要なエネルギーを補給する方法は、たったの1つ。「食事から栄養素を吸収する」ことです。元気に健康に活動するために、小腸はとても大切な臓器なのです。
〇水分やミネラルの吸収は「大腸」
小腸で栄養素を吸収し終えた残りカスは、大腸に送られて、さらに水分とミネラルが吸収されます。取るものを取り終えた食品の残りは、便として排出されます。
【大腸のきほん知識】
・全長5~7mの長い管
・小腸の2倍の太さ
・盲腸、結腸、直腸にわかれている
・約100種類の腸内細菌が住んでいて、発酵によって消化を手伝っている
私たちの体には、約100兆個の腸内細菌が住み着いています。腸内細菌は私たちの食事の残りを頂くかわりに、様々な良い効果をもたらしてくれます。
〇腸の相棒「腸内細菌」
「腸内フローラ」という言葉をしっていますか?
直訳すると「腸内のお花畑」です。
私たちの大腸には、いろんな種類の腸内細菌がたくさん住み着いています。腸一面に散らばっている腸内細菌が、まるでお花畑のように見えることからこの名前が付けられました。
【腸内細菌のはたらき】
・小腸で吸収できなかった食物繊維を分解して、とことん栄養素を絞りとる
・ビタミンB6、ビタミンK、ビオチンなどのビタミンを作る
食物繊維やオリゴ糖は、小腸で分解・吸収できない成分です。このようにヒトの消化酵素で分解できない糖質を、「難消化性糖質」と呼んでいます。そんな糖質でも、腸内細菌の発酵によって「酢酸」や「プロピオン酸」のような、体に吸収できる成分にかえられることで、エネルギーとして使うことが出来るのです。
また、腸内細菌のなかにはビタミンを作ることが出来るものもいます。
腸内細菌は私たちの体にとって大切な小さな相棒たちなのです。
〇「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」ってなに?
腸内環境を整える「腸活」をする上で、重要な用語が「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」です。
「プロバイオティクス」とは?
私たちの腸内細菌にも、「いいヤツ」と「悪いヤツ」、そして「どちらでもない」ものがいます。
それぞれ専門用語で「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」と呼びます。腸内環境は「善玉菌」VS「悪玉菌」の割合によって決まります。「日和見菌」は普段はなにもしませんが、「悪玉菌」が増えると悪に寝返ります。健康な腸内環境を維持するためには「善玉菌」がたくさんいる環境作りが大切です。
【善玉菌の代表格】
・乳酸菌
・ビフィズス菌
「プロバイオティクス」は、このような「善玉菌」を積極的に食事からとることで、「善玉菌」を増やそうという考え方です。口からとった食事は、胃や小腸で消化を受けるので、より消化酵素に強く、生きた状態で腸まで届く菌の開発が進められています。
「プレバイオティクス」とは?
腸内細菌たちにも食料が必要です。善玉菌のごはんになる難消化性食品成分をとることを「プレバイオティクス」といいます。
難消化性食品成分とは、小腸で消化されて分解されにくい食品成分です。
善玉菌たちは難消化性食品成分をつかって、発酵によって短鎖脂肪酸という酸を作り出します。短鎖脂肪酸は乳酸や酪酸などです。この酸が腸内を酸性に近づけることで、乳酸やビフィズス菌が成長しやすい環境をつくります。
【難消化性食品成分の代表】
・水溶性食物繊維
・オリゴ糖
・糖アルコール
・レジスタントスターチ
「プレバイオティクス」は腸内善玉菌のごはんになる食品を取ることで、腸内環境を良くしていこうという考え方です。
【腸に良い効果が期待できる食材】
善玉菌を補給する「プロバイオティクス」、善玉菌のごはんをとる「プレバイオティクス」という2つの観点から、腸に優しい食材を紹介していきます。
☆善玉菌をとる☆
・ヨーグルト
・チーズ
・乳酸菌飲料
・キムチ
・ぬか漬け
・ピクルス など
☆善玉菌のごはんをとる☆
難消化性食品成分の代表は「食物繊維」です。成人男性:21g以上、成人女性:18g以上が1日の目安量です。
・繊維質の野菜(根菜など)
・雑穀米、玄米
・全粒粉パン
・オリゴ糖
よく「ヨーグルト+オリゴ糖」にして食べたりしますよね。腸内環境を考えると、善玉菌とそのごはんを取ることが出来るので、実は効率的な食べ方なのです。
〇まとめ
「腸は第2の脳」なんて呼ばれるくらい大切な臓器です。私たちの活動に必要なエネルギーの吸収を行い、体にとって不要なモノの排出にも関わっています。また、腸内細菌という小さな働きモノの住みかでもあります。腸内細菌たちは食べ物の消化・吸収を助け、腸内環境の改善を手伝ってくれています。腸内環境が悪いと、便秘や下痢、免疫機能が低下するといった不調につながります。「プロバイオティクス「プロバイオティクスを意識しながら、よい腸内環境を作っていきたいですね。
【参考資料】(最終閲覧日:2020年6月27日)
・日本人の食事摂取基準(2020年版)定検討会報告書
・しっかり学べる!栄養学/川端輝江/ナツメ出版/2012年11月1日
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