【初めての栄養学:カルシウム】

栄養学のきほん

多くのサプリメントや健康食品に含まれているカルシウム。

骨や歯の成長に必要な成分として有名ですよね。子供の頃に身長を伸ばしたくて、牛乳をたくさん飲んでいたなんて人もいるのではないでしょうか。カルシウムは成長期の子供だけではなく、大人にも必要なミネラルです。そんなカルシウムについてまとめていきます。

〇カルシウムは歯や骨だけではないんです…

体重60kgの人の体のなかには、約1,000gのカルシウムが存在といわれています。カルシウムの99%は、骨や歯のような硬組織とよばれる部分に含まれていますが、残りの1%は筋肉、血液、脳脊髄液、全身の細胞などいろんな場所にあります。

〇カルシウムは小腸で吸収される

食事からとったカルシウムは、小腸で吸収されます。私たちは毎日の食事から600mg程度のカルシウムとりますが、このうち体のなかに吸収するのは25~30%くらいです。また、ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるビタミンです。ビタミンDは、私たちの肌が紫外線に当たると作られる自家生産できるビタミンでもありますが、食事からもしっかりととっていく事が重要です。

〇骨は「破壊と再生」を繰り返している…だから大人もカルシウムが必要です

カルシウムは成長期の子供だけが必要なミネラルではありません。生きている限り、私たちの体は「古い骨を壊して、新しい骨を再生する」からです。これを「骨のリモデリング」といいます。

骨を壊す働きをする細胞は「破骨細胞」、新しい骨を作る細胞は「骨芽細胞」と呼ばれます。健康な大人では骨と破壊と再生は、同じスピードで進みます。成長期の子供は破壊よりも再生が多いので、骨の量が増えます(背が伸びる)。しかし、骨粗しょう症の人は破壊のほうが多くなっていて、骨をもろくしてしまいます。

次になぜ、骨の破壊が必要なのかを考えてみましょう!

「なぜわざわざ、必要な骨を壊してしまうのでしょうか??」

最初に体の中のカルシウムの99%は骨と歯にあるという話をしました。骨の破壊は残り1%を維持するためにあるのです。

カルシウムには、次のようなたくさんの働きがあります。カルシウムがどのように関係するのかをそれぞれ詳しく解説していきます。骨や歯以外にあるカルシウムが少なくなると、これらの機能が正常に働かなくなるのです。

・筋肉の伸び縮み

私たちの筋肉が伸び縮みするとき、2つの筋肉の繊維がお互いを「引っ張ったり」「離れたり」します。カルシウムは2つの筋肉の繊維が、くっつけるために必要です。

少しイメージをしながら、カルシウムの機能を見ていきましょう。

筋肉は2つの繊維から出来ています。「アクチン」と「ミオシン」です。ここでは双子の「アクチンくん」と「ミオシンくん」として考えていきましょう!2人が手をつないで引っ張り合うとき、2人の距離は短くなって筋肉は縮みます。しかし、手を放してしまうと2人はもとの位置に戻って、筋肉は伸びます。

カルシウムの効果は「アクチンくん」と「ミオシンくん」の手をつながせることです。

あるおばあさんの体験談でこんな話があります。彼女は薬の飲み合わせが悪かったために、カルシウム不足を起こしてしまっていました。ある日突然、体に力が入らなくなり、急に起き上がれなくなったそうです。たった1%ですが、カルシウム無しでは私たちの体は正常に動かすことができないのです。

・正常な血圧の維持

カルシウムは血圧を維持するためにも欠かせないミネラルです。なぜなら、血管の細さを変えて血圧をコントロールしているのは、平滑筋という筋肉だからです。

前の項目で、筋肉の伸び縮みにカルシウムが必要だとお話しました。血管は内側から、内皮細胞、内膜、中膜、外膜の4層で出来ています。このうち、中膜は平滑筋という筋肉で出来ているのです。血管の伸び縮みもまた、筋肉の運動なのでカルシウムが必要です。

ところで、冬になると手足が冷えますよね。一体どうして寒い所に行くと冷たくなるのでしょうか?単に気温が低いから…というわけではないのです。私たちの体が冷えると、「大事なところに血液を集めて、手先や足先の血管を細くして血流を減らす」という反応を無意識におこないます。生きるために必要な脳や心臓に血液をまわし、血液が冷えやすい先の方にはあまり送らないようにするのです。これはどんな環境でも生きていくための生存本能の1つなのです。

あたり前のように使っている「血圧」という指標ですが、どうやって計算しているのか知っていますか?

「血圧=血液量×末梢血管抵抗(手足先の血液の流れにくさ)」という計算式で求められます。血管が縮まっているとき、血液は流れにくくなっているので、末梢血管抵抗は高くなります。その結果、血圧が高くなるのです。

ちなみに、高血圧の薬の1つ「カルシウム拮抗剤」があります。血液中のカルシウムを邪魔することで、血管が縮んで血圧を上げるのをふせぐことができます。

・血液が固まるのを助ける

ケガをして血が出た後、傷口にかさぶたが出来ますよね。かさぶたもまた、体にとって重要な仕組みです。血液が固まってかさぶたが出来るとき、12個の因子(成分)が関わっています。そのうちの4番目の因子(成分)がカルシウムなのです。

血液中にはフィブリノーゲンというたんぱく質があります。普段は血液中に溶けた状態です。しかし、血液が固まるために必要な因子と反応することで、網状のたんぱく質:フィブリンに変わります。この網が傷口を蓋することで出血できます。カルシウムはフィブリンの栓を作るために必要なミネラルなのです。

ちなみに、遺伝的に12個の血液凝固因子のいくつかが欠けてしまう疾患があります。どの因子も正常にかさぶたを作るのに必要なものなのです。

・神経と神経の間の情報伝達

神経と神経の間にはすき間があります。カルシウムは神経と神経のすき間をこえて、次の神経に情報を伝える橋渡しのお手伝いをしています。情報の橋渡しをする物質を「神経伝達物質(神経の情報を隣に伝える物質)」といいます。足を机にぶつけた時の痛みは、脳につながる神経に情報が伝えられることで「痛い!」と感じることができるし、脳からの指令は、手の神経に伝わることで物を掴むことができます。神経の端っこには、お隣の神経に情報を伝える「神経伝達物質」をためている場所があって、これが隣に放出されるされることで情報が伝わります。

難しい言葉が多いので、イメージしやすいものに例えてみます。神経の情報伝達は伝書ハトで手紙を送るのににています。「神経伝達物質」は伝書ハトです。Aさんの家(神経)から伝書ハト(神経伝達物質)をBさんの家(お隣の神経)に飛ばすことで手紙(情報)を届けることができます。私たちの体も、同じような方法で情報を伝えているのです。

さて、カルシウムがここにどう関係するのでしょうか?

カルシウムは片方の神経の端にためている「神経伝達物質」を外に放出するために必要です。伝書ハトの連絡でいうと、ハトが外に出られるように「窓を開けるAさん」のポジションです。神経の間で情報のやり取りをスムーズにするためには、カルシウムはなくてはならないのです。

〇まとめ

ちょっと専門的な話が多くて難しかったかもしれません。でも、「なぜ」が分かることで、それぞれの栄養素の大切さがよく理解できるようになるはずです。「骨や歯だけではない!」カルシウムの働きも意識しながら、毎日の食事でとっていきたいですね。

【参考資料】(最終閲覧日:2020年6月20日)

・カルシウム その基礎・臨床・栄養 CALCIUM/ 1999年5月30日

編集:西沢良記・白木正孝・江澤郁子・広田孝子

発行:社団法人 全国牛乳普及協会

後援:農林水産省 農畜産業振興事業団

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