【初心者のための栄養学:ナイアシン】

栄養学のきほん

ナイアシンは体の中で、いろいろな反応に関わるなんでも屋なビタミンです。新しい細胞を作る時のDNA合成。様々な酵素の働きを助けたり、エネルギーを作ったり、抗酸化作用や脂肪・ホルモン合成などに関わっています。今回は働き者のナイアシンについてまとめていきます。

〇ナイアシンってなに?

ナイアシンは、狭い定義ではニコチン酸とニコチンアミドのことをいいます。ニコチン酸やニコチンアミドは、煙草に含まれている「ニコチン」とは別物です。また、広い定義では、アミノ酸の1つ、トリプトファンもナイアシンの仲間です。トリプトファンは体の中でナイアシンと同じ働きをする構造をもっているからです。ナイアシンは体の色んな場所で働いているので、健康な食事には無くてはならないビタミンです。

〇ナイアシンの効果① 【代謝に必要な酵素の働きを助ける】

私たちの体の中には、たくさんの酵素が働いています。体に必要なエネルギーを作る時も、体の様々な細胞を作るときも、酵素の力が必要です。酵素のなかには、そのままの状態では働くことができないものがあります。酵素に結び付いて、正常に働くように助けるものを補酵素とよんでいます。補酵素は酵素のやる気スイッチを押す物質です。ナイアシンは2200種類以上の酵素のうち、500種類の補酵素であるといわれています。

たとえば、ナイアシンはアルコールの代謝に必要です。アルコールを分解するときに必要なアルコール脱水素酵素の補酵素だからです。ちょっと飲み過ぎてしまった時には、ナイアシンもしっかりととるようにしましょう。

〇ナイアシンの効果② 【皮膚の健康を保つ】

かつてトウモロコシを主食するイタリアの貧民の間で「ペラグラ」という皮膚の病気が流行しました。語源はイタリア語で”pelle”(肌)”agra”(粗い)という意味です。皮膚がガサガサになるだけではなく、「ペラグラ」でなくなってしまう人もいる怖い病気です。この病気はナイアシン欠乏と関係が深いと言われています。治療のためには、ナイアシンとバランスの良い食事をとることが重要です。日本では珍しい疾患ですが、アルコール依存症と不健康な食事が組み合わさることで発症することがあると言われています。貧しい国ではいまだに、支援食糧が上手く調達できなかった時に発症しているようです。

〇ナイアシンの効果③ 【DNAの修復、合成、新しい細胞産生に関わる】

私たちの体を作るのに必要な情報は、細胞のDNAに保存されています。新しい細胞を作る時には、DNAに記録されている情報をそっくりそのままコピーします。パソコンに保存しているファイルを、コピーして複製するような感じです。ナイアシンはDNAの情報コピーのお手伝いをします。

また、時々パソコンのデータが欠損することってありますよね?作りかけのレポートを保存する前に、パソコンがエラーを起こしたりして…そんな残念なこともたまにあります。

DNAの情報も、色んな理由で破損することがあります。パソコンだったら、自動保存機能で昔のデータが残っていたりします。そこから消えてしまったところを修復しますよね。私たちの体も同じように、壊れたDNAのデータ修復しようとします。この時に、ナイアシンが修復作業を手伝います。私たちのDNA情報管理にはなくてはならない助っ人なのです。

〇注意する事

食事が原因となり、ナイアシンを過剰摂取して健康被害がおきたという報告は確認されていません。しかし、脂質異常症の治療のために大量摂取したときに、消化不良、下痢・便秘や肝臓の障害が起きたという報告があります。サプリメントや健康食品を取る時には、十分注視しましょう。

また、不足によっておこる「ペラグラ」に注意するようにしましょう。「ペラグラ」の主な症状は、皮膚炎、下痢、神経症状です。日本では珍しいですが、トウモロコシを主食とする食生活を送っていると不足する可能性が考えられます。ナイアシンは水に溶けやすいので、食材をゆでるとゆで汁に栄養素がとけだします。電子レンジや焼くなどの調理法の方が、摂取量が多くなるのでオススメです。

〇摂取量(推奨量)

食事から吸収されたナイアシンのうち、体に吸収されるのは60%くらいと考えられています。エネルギー代謝に必要なビタミンであることから、1日の食事からとるエネルギーに応じて摂取量が決められています。

【1日の推奨量】

成人女性:11~12mgNE/日

【摂取上限】

ニコチンアミド:250mgNE/日、ニコチン酸:65mg/日

〇食材で言うと…

ナイアシンは動物性食品に多くふくまれています。魚ならカツオやマグロ、サバなど。肉なら鶏肉がヘルシーでおすすめです。お肉やお魚もしっかりと取るようにしましょう。

・マグロ(90g/お刺身6枚):12.8mgNE

・焼きサバ(120g/切り身1枚):10.1mgNE

・鶏むね肉(100g):10.6mgNE

調理方法は焼くのがおすすめです!ビタミンは調理の途中で少なくなってしまうことがあります。鶏むね肉はフライパンで焼くことで、90%程度のナイアシンを保持できると言われています。

【参考文献】

・日本人の食事摂取基準(2020年版)定検討会報告書

・総説 食事中のビタミンの調理損耗に関するレビュー(その2)(ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸、ビタミンC)/小島彩子、尾関彩、中西朋子、佐藤陽子、千葉剛、阿部晧一、梅垣敬三/Vitamins (Japan), 91 (2), 87-112 (2017)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/91/2/91_87/_pdf/-char/ja

・ナイアシンの研究の歴史/田中寛/Vitamin (Japan), 7S ( 2), 63−71 (2001)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/75/2/75_KJ00003703890/_pdf/-char/ja

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